【将棋解説】
第4期叡王戦七番勝負第3局 高見叡王vs永瀬七段

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第4期叡王戦七番勝負 第3局
対局日
持ち時間
3時間(1日制/チェスクロック方式)
対局者
高見 泰地 叡王<後手>
永瀬 拓矢 七段<先手>
対局場所
長崎県:史跡料亭 花月
戦型
矢倉模様の力戦形

局面解説

序盤

【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で26手指した局面
point
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲9六歩、▲3七桂、▲4六角、▲6七金左、▲6七金右 など
このまま金矢倉に囲い合うと、後手が受け続ける展開になることが多いため、
現代将棋では後手から早い段階で仕掛ける指し方が有力とされています。

27手目で本譜は▲6七金左と上がって、後手から先に仕掛けられることを警戒し、
金矢倉の堅さよりも早期の陣形バランスを優先しました。
但し、自玉が薄いと詰まされやすくなるため、それだけ終盤力が求められます。
逆転負けを減らすならば▲6七金右から堅くする指し方が望ましいです。




【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で31手指した局面
point
32手目:形勢判断と候補手
互角:△7三桂、△6四歩、△1四歩 など
32手目では、将来的な駒の働きを重視して△7三桂や△6四歩のように、
少しずつ駒を押し上げながら陣形整備をする手が有力です。

但し、アマの場合は△7三銀~△8四銀~△7五歩と棒銀で攻めて、
先手の8筋が薄いことを積極的に咎める手順も有力です。
先手が正確に対応すれば、後手の棒銀は怖い攻め筋ではないのですが、
最善手で応じられたとしても後手が作戦負けになる程度です。
プロの場合は、まだまだ相手の研究範囲内という前提で考えるので、
わずかでも甘い仕掛けは見送りますが、アマが指さない理由にはなりません。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で42手指した局面
point
43手目:形勢判断と候補手
互角:▲4五歩
先後同型のまま駒組みが進み、現局面で飽和状態を迎えました。
43手目で▲6八角と上がっておく手はありますが、▲3七桂と跳ねているため、
角を好位置である2六まで移動する四手角を実現することはできません。
また、後手も同じように角を動かせば千日手になる可能性もあります。
よって、先手は▲4五歩から仕掛けるしかありません。
開戦は歩の突き捨てから」なので、早めに3筋と2筋も突き捨てます。
主導権を握っている以上、多少の歩損は仕方ありません。




中盤

【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で57手指した局面
point
58手目:形勢判断と候補手
互角:△2三銀
後手は、先手の飛車の利きが素通しになることに警戒する必要があります。
さらに▲3四金と打たれる隙があるため、玉頭も不安定な状態です。
玉1枚で支えているは突破されやすいうえに、
1度突破されてしまうと王手の連続で一気に寄せられやすくなります。
58手目で2筋に駒を配置しつつ、▲3四金を防ぐ手は△2三銀だけです。
銀を手放すことを惜しまずにしっかりと手厚く受けておきます。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で62手指した局面
point
63手目:形勢判断と候補手
互角:▲1六歩、▲3五角
63手目で先手に1歩あれば▲3四歩と叩いて先手優勢です。
この局面では、特に「一歩千金」となっており、
▲3五角と切って角歩交換をしても、かなり攻めが続きます。

本譜は▲1六歩と突きました。
どうしても歩が欲しいときは自玉と反対側の端から着目していきます。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で73手指した局面
point
74手目:形勢判断と候補手
互角:△6五歩
後手は連打の歩によって、2歩を犠牲にして手番を握ることができました。
今度は後手が△6五歩と突いて反撃開始です。
但し、後手の持ち駒は1歩しか残っていないため、
無理に攻め込むようなことはしません。
現状の先手の攻撃態勢を目安にして、
終盤で攻め合いが見込める程度に形を作っておきます。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で84手指した局面
point
85手目:形勢判断と候補手
互角:▲4五桂
85手目では▲4五桂と打つ手が有力です。
△4二玉には盤を広く見て▲9七角とぶつけるのが好手で攻めが続きます。
▲4五桂に対して△同銀 ▲同歩 △4三歩のような辛抱をされると、
まだまだ難しいですが、駒得のうえに駒が前に進むのは確実にプラスです。

本譜は▲1五歩としました。
攻めとしては遅くなりますが、香を活用するまでしっかりと我慢することで、
攻めが切れてしまうリスクを下げつつ、相手にプレッシャーをかけた手です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で89手指した局面
point
90手目:形勢判断と候補手
互角:△9四歩、△1六歩、△3六歩
後手には△8六角 ▲同歩 △5八銀という割り打ちの狙いがあります。
以下、▲6八金 △4七銀成と金を剥がしつつ、
▲同飛 △3七金で飛車を捕獲できるのですが、
90手目の局面からだと▲4五桂という返し技があります。
以下、▲7七角と打たれる含みが厳しく、
後手は持ち駒の増えた先手に食い付かれてしまいます。
自玉が薄い状態では、大駒を切ることに対して、特に慎重になることが必要です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で103手指した局面
point
104手目:形勢判断と候補手
互角:△5四銀上、△8五歩
104手目の▲3九歩は先手がずっと打ちたかった歩です。
▲3四歩と叩くことはできなくなりますが、
成桂の働きを弱めることで飛車が安全になり、
最終防衛ラインとして入玉される可能性をグッと下げています。
ここは△5四銀上として、成桂を取らせている間に
盤上の駒の活用を急ぐ手が有力です。

本譜は△4九成桂としましたが、この交換は先手が得をしました。
攻め駒が先手玉に近づきましたが、
金の動きをする駒は、最前列にいると可動域が半分の3マスに減るため、
駒の価値がかなり下がります。

終盤

【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で110手指した局面
point
111手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲4六香
次に後手から△8三香のように打たれてしまうと、
8六の銀が逃げられないので、先手は8筋が受けづらくなります。
歩よりも前にいる大駒や金駒は香で狙われやすく、
特に逃げられない状態では急所となります。
△8三香を防ぐために▲8五香と打つような手もありますが、
先手の戦力ダウンにもなるため、攻める手から考えたいところです。

111手目では▲4六香と打つ手が有力です。
後手の△8三香よりも含みが分かりづらいのですが、
△3四銀や△5四銀引と逃げる手に対しては▲5六桂と打つのが好手で、
角か桂で4四の地点を突破することができます。
▲4六香に対して△同銀 ▲同金は駒得しながら駒が進むため、
後手は手抜いて攻め合うしかありません。
お互いに玉が薄くて怖いですが、
寄せ合いになると、やはり持ち駒の多さがものを言う展開になります。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で126手指した局面
point
127手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲1一角、▲4五桂 など
先手玉は△5九銀 ▲5八玉 △4八成桂までの詰めろになっているため、
▲同歩として飛車を取ることはできません。
そして、先手の持ち駒は豊富ですが、後手玉に詰みはありません。
▲5八玉のような早逃げで詰めろを受ける手はありますが、
詰めろ逃れの詰めろとなる手があれば、そちらの方が勝ちは明確になります。

まず、先手玉の詰めろ自体は単純なので、
「5九に駒の利きを足す」「4八に駒の利きを足す」
「後手の持ち駒の銀を5九以外で使わせる」「4九の成桂を取る」
のいずれかを満たすだけでも、詰めろを逃れることはできます。
さらに後手玉へ詰めろをかける訳ですが、持ち駒に角があるときは、
急所となるマスからサッと斜めのラインを目で追います。
▲3七角・▲2六角・▲1五角、▲5七角・▲6六角・▲7五角・▲8四角、
取られてしまうマスが多く、打てたとしても後手陣への睨みがイマイチです。

次に飛車ですが、▲4七飛は「4八に駒の利きを足す」条件を満たしたうえで、
4筋に二段ロケットができるので詰めろ逃れの詰めろです。
但し、△4六歩や△4六香がさらに詰めろ逃れの詰めろとなるため、
勝ち筋は残っているものの、飛車取りが残って間違えられないので怖いです。

本譜は▲1一角と打ちました。
これで後手玉を狭めつつ、合駒請求をしていきます。
後手も持ち駒の銀を残そうとはしますが、2枚の角で追撃すれば、
「後手の持ち駒の銀を5九以外で使わせる」ことが実現できます。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第3局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局の投了図
131手にて、後手の高見叡王が投了し、永瀬七段の3勝となりました。

投了図以降、△2三銀と引くと▲同角成 △同玉 ▲2二角成から
後手玉に詰みがあります。

詰みを逃れるならば△2三銀打とするしかありませんが、
これで先手玉の詰めろが消えたので、▲2二角成と迫る手が間に合います。

棋譜

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棋戦:第4期叡王戦七番勝負 第3局
先手:永瀬拓矢七段
後手:高見泰地叡王
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00)
4 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
5 7七銀(68) ( 0:00/00:00:00)
6 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
7 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
8 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00)
9 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
10 3三銀(42) ( 0:00/00:00:00)
11 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
12 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
13 7八金(69) ( 0:00/00:00:00)
14 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00)
15 5八金(49) ( 0:00/00:00:00)
16 4一玉(51) ( 0:00/00:00:00)
17 6九玉(59) ( 0:00/00:00:00)
18 5二金(61) ( 0:00/00:00:00)
19 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00)
20 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00)
21 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00)
22 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
23 7九角(88) ( 0:00/00:00:00)
24 3一角(22) ( 0:00/00:00:00)
25 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00)
26 4四歩(43) ( 0:00/00:00:00)
27 6七金(78) ( 0:00/00:00:00)
28 4三金(32) ( 0:00/00:00:00)
29 7八玉(69) ( 0:00/00:00:00)
30 3二玉(41) ( 0:00/00:00:00)
31 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00)
32 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00)
33 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00)
34 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00)
35 4七銀(48) ( 0:00/00:00:00)
36 6三銀(62) ( 0:00/00:00:00)
37 2九飛(28) ( 0:00/00:00:00)
38 8一飛(82) ( 0:00/00:00:00)
39 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00)
40 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00)
41 9五歩(96) ( 0:00/00:00:00)
42 1五歩(14) ( 0:00/00:00:00)
43 4五歩(46) ( 0:00/00:00:00)
44 同 歩(44) ( 0:00/00:00:00)
45 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00)
46 4四銀(33) ( 0:00/00:00:00)
47 3四歩(35) ( 0:00/00:00:00)
48 同 金(43) ( 0:00/00:00:00)
49 2四歩(25) ( 0:00/00:00:00)
50 同 歩(23) ( 0:00/00:00:00)
51 2五歩打 ( 0:00/00:00:00)
52 同 歩(24) ( 0:00/00:00:00)
53 3六銀(47) ( 0:00/00:00:00)
54 3五歩打 ( 0:00/00:00:00)
55 2五銀(36) ( 0:00/00:00:00)
56 同 金(34) ( 0:00/00:00:00)
57 同 桂(37) ( 0:00/00:00:00)
58 2三銀打 ( 0:00/00:00:00)
59 3三歩打 ( 0:00/00:00:00)
60 同 桂(21) ( 0:00/00:00:00)
61 同 桂成(25) ( 0:00/00:00:00)
62 同 玉(32) ( 0:00/00:00:00)
63 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00)
64 4六桂打 ( 0:00/00:00:00)
65 4七金(58) ( 0:00/00:00:00)
66 3八桂成(46) ( 0:00/00:00:00)
67 2七飛(29) ( 0:00/00:00:00)
68 2六歩打 ( 0:00/00:00:00)
69 同 飛(27) ( 0:00/00:00:00)
70 2五歩打 ( 0:00/00:00:00)
71 同 飛(26) ( 0:00/00:00:00)
72 2四歩打 ( 0:00/00:00:00)
73 2七飛(25) ( 0:00/00:00:00)
74 6五歩(64) ( 0:00/00:00:00)
75 4六歩打 ( 0:00/00:00:00)
76 6六歩(65) ( 0:00/00:00:00)
77 同 金(67) ( 0:00/00:00:00)
78 6五歩打 ( 0:00/00:00:00)
79 6七金(66) ( 0:00/00:00:00)
80 6四角(31) ( 0:00/00:00:00)
81 4五歩(46) ( 0:00/00:00:00)
82 同 銀(44) ( 0:00/00:00:00)
83 4六歩打 ( 0:00/00:00:00)
84 3四銀(45) ( 0:00/00:00:00)
85 1五歩(16) ( 0:00/00:00:00)
86 4四歩打 ( 0:00/00:00:00)
87 5七角(79) ( 0:00/00:00:00)
88 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00)
89 同 銀(77) ( 0:00/00:00:00)
90 5五歩(54) ( 0:00/00:00:00)
91 同 歩(56) ( 0:00/00:00:00)
92 同 角(64) ( 0:00/00:00:00)
93 6六歩打 ( 0:00/00:00:00)
94 6四角(55) ( 0:00/00:00:00)
95 6五歩(66) ( 0:00/00:00:00)
96 同 桂(73) ( 0:00/00:00:00)
97 6六角(57) ( 0:00/00:00:00)
98 5五歩打 ( 0:00/00:00:00)
99 1四歩(15) ( 0:00/00:00:00)
100 1六歩打 ( 0:00/00:00:00)
101 4五歩(46) ( 0:00/00:00:00)
102 同 銀(34) ( 0:00/00:00:00)
103 3九歩打 ( 0:00/00:00:00)
104 4九成桂(38) ( 0:00/00:00:00)
105 1六香(19) ( 0:00/00:00:00)
106 1五歩打 ( 0:00/00:00:00)
107 同 香(16) ( 0:00/00:00:00)
108 1四香(11) ( 0:00/00:00:00)
109 同 香(15) ( 0:00/00:00:00)
110 同 銀(23) ( 0:00/00:00:00)
111 4六香打 ( 0:00/00:00:00)
112 8八歩打 ( 0:00/00:00:00)
113 4五香(46) ( 0:00/00:00:00)
114 8九歩成(88) ( 0:00/00:00:00)
115 4六金(47) ( 0:00/00:00:00)
116 5四桂打 ( 0:00/00:00:00)
117 5五角(66) ( 0:00/00:00:00)
118 同 角(64) ( 0:00/00:00:00)
119 同 金(46) ( 0:00/00:00:00)
120 8八角打 ( 0:00/00:00:00)
121 4四金(55) ( 0:00/00:00:00)
122 同 角成(88) ( 0:00/00:00:00)
123 同 香(45) ( 0:00/00:00:00)
124 7九金打 ( 0:00/00:00:00)
125 6八玉(78) ( 0:00/00:00:00)
126 8六飛(81) ( 0:00/00:00:00)
127 1一角打 ( 0:00/00:00:00)
128 2二香打 ( 0:00/00:00:00)
129 4五桂打 ( 0:00/00:00:00)
130 3四玉(33) ( 0:00/00:00:00)
131 1二角打 ( 0:00/00:00:00)
132 投了 ( 0:00/00:00:00)
まで131手で先手の勝ち


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