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解説動画
竜王戦第3局
竜王戦第5局
対局情報
読売新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説
序盤
24手目:形勢判断と候補手
互角:△6四銀
次に▲4五歩 △同歩 ▲同桂となる手順を狙われないために、
24手目は△6四銀と上がっておく手が無難です。
仮に△5三銀よりも▲4六歩&▲3七桂が早い場合は、△6四歩~△6三銀、
あるいは△7四歩~△7三銀のルートに変更した方が、同様に無難です。
本譜では先手が早いタイミングで桂を跳ねることを見越して、
後手も
駒組みを合わせていたものと思われます。
34手目:形勢判断と候補手
互角:△1四歩、△7二飛、△4二角 など
34手目で、手薄になった8筋を攻めようとして、△8五歩~△7五歩とすると、
7筋で歩を交換した直後に、先手から▲7四歩と打たれる反撃が厳しいです。
逆に言えば、先手の▲6七金左は△7三桂を見てから指さなければいけません。
後手としては△7三桂と
跳ねた手を生かすために、△8五歩を保留して、
△7二飛~△8五桂で、7筋に攻め駒の
利きを集中させる方針となります。
45手目:形勢判断と候補手
互角:▲5六歩、▲1五歩、▲6八角、▲8六銀 など
先手の攻め筋としては▲4五歩~▲3五歩しかありませんが、
45手目で仕掛けると△4四銀引で
手厚くされてしまうため、見送ります。
本譜は▲8六銀と上がりました。
将来的に高い確率で△8五桂となるので、その先受けとして有効な手です。
△8五歩と突かれたら▲7七銀と戻るしかないので、2手損にはなりますが、
△8五桂がなくなれば、それ以上に後手の攻めが遅れるので問題ありません。
中盤
57手目:形勢判断と候補手
互角:▲1三歩、▲2四歩、▲4四歩
57手目で▲同歩と取ってはいけません。
1筋を突き捨てたことで後手に歩を渡しているので、
△9八歩~△9七歩の
連打が生じて、後手の端攻めが速くなっているうえに、
6四の銀が進出してくると、4二の角も働いてきます。
△7六歩と取り込まれる形は少し気持ち悪いですが、
7七には駒が4枚も利いているので簡単に破られることはありません。
本譜は▲1三歩と垂らしました。
次の▲1五香が厳しいので、この歩は放置することができません。
61手目:形勢判断と候補手
互角:▲1二歩、▲2四歩
61手目で本譜は▲1二歩と打ちました。香を吊り上げてから、
その裏に
歩を垂らすのは、玉が入城していない矢倉を崩す手筋です。
▲1一歩成が実現すれば、先手の
駒得が確定するので、
後手はそれを防ぎますが、候補手は△2二銀か△2二玉の二択です。
△2二銀の場合、
壁形を作ったことに満足して、▲1一歩成とはせず、
端攻めを中止して、逆方面からの戦いに切り替えます。
「壁形」の対価が「1歩の消費」では見合わないので、△2二玉が最善ですが、
▲1一歩成に△同玉と取らせることで危険地帯に誘導することができます。
65手目:形勢判断と候補手
互角:▲1三角成
65手目の局面でゆっくりしていると△2二玉と戻られてしまう恐れがあります。
よって、端攻めを継続することが重要で、▲1三角成と切るしかありません。
角香交換の
駒損は大きいですが、
香が手に入ると4筋で
田楽刺しがあるので、実質的には角金交換です。
後手玉が隅にいる状態で▲1五香と走る活用も大きく、バランスは取れています。
68手目:形勢判断と候補手
互角:△2二銀、△1四歩
68手目で△1二歩と打つと、▲1四歩と打たれてしまい、
歩で桂を取られてしまいます。
ここは「
敵の打ちたいところに打て」で、
△1四歩と打って▲同香と近づけてから、△1二歩と打つのが手筋です。
尚、この局面においては△2二銀と引く手も有力です。
次に△1五角と香を取ることができるため、結果的に▲1四歩を防いでいます。
79手目:形勢判断と候補手
互角:▲4三歩、▲2三歩、▲7三歩
後手玉はだいぶ薄くなりましたが、
先手の攻め駒が少ないので、このまま押し切ることはできません。
▲4六銀のように盤上の駒を使って増援を送る手は、
次に△7三香と
玉頭に
ロケットを作られてしまうので間に合いません。
また、貴重な持ち駒の金を手放す訳にもいきませんし、
先手の唯一の
大駒である飛車も、動くと角打ちの隙が生じてしまいます。
さらに、現時点では桂の有効な使い道がないので、
▲1三香成は権利として残しておきたいです。
よって、消去法で持ち駒の歩を使うしかないと判断します。
本譜は▲4三歩と打ちました。
△同金には▲2三歩の垂らしが厳しいので角を逃げますが、
拠点が残ります。
後手玉から少し遠い点は不満ですが、
終盤で後手玉の
寄せにあまり絡まなかったとしても、
投資が1歩のうえに
手番を失わないので、リスクが低く、お得感があります。
84手目:形勢判断と候補手
互角:△7七歩成、△4六歩
84手目で△同歩は▲3四歩、△同銀は▲4五桂があるので、
そろそろ玉の遠さを生かして攻め合いたいところですが、
自陣の飛車と角が攻めに使えていないので、具体的な方法は悩ましいです。
本譜は△7四香と打ちました。
力を溜める手なので、スピード感はわずかに欠けますが、狙いは明確です。
他には△4六歩と叩いたり、△7七歩成 ▲同桂に△7六歩と叩いたりして、
歩でバランスを崩していく手が有力ですが、効果の見極めは難しいです。
終盤
94手目:形勢判断と候補手
先手有利:△7七歩成、△4八角
先手が待望の▲4五桂を実現しました。
△4四角には▲3三歩が厳しいため、角を逃げる手はありません。
後手玉は薄いですが、9二の飛車が受けによく利いているので、
詰めろがかかることはあっても、
必至がかかることはまずありません。
本譜は△7七歩成と攻め込みました。
▲同桂に△同香成ではなく、△7六歩と打つのが狙いです。
尚、△7七銀と打ち込むのは
重たい攻めで、▲6九玉と逃げられたときに、
7四の香が活躍する未来が見えず、簡単に戦力不足となります。
101手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲2三歩、▲2二歩
101手目で▲4二角や▲4二銀と打って、
飛車の横利きを遮りつつ、3三の金を狙うのは、部分的には厳しい手です。
但し、本局の場合は△7七香成~△4四角という返し技があり、
3三の金に
紐を付けつつ、△6五桂の王手金取りを狙われてしまいます。
本譜は▲2二歩と垂らしました。
▲2一金までの詰めろなので、後手は対応が必要ですが、
△同玉は攻めの拠点に近づけることができますし、
△同飛は▲3一銀で手順に拠点を増やすことができます。
直線的な攻め方でうまくいかない場合は、相手の形が良い証拠でもあるので、
手抜きできない歩打ちによって、相手の形を変えていくと効果的です。
114手目:形勢判断と候補手
先手優勢:△同玉、△7七歩成
114手目の局面で後手玉は▲2二金からの詰めろとなっているため、
本譜は△同玉として と金を払いました。
これに対しては▲4五桂と打つ手が、▲3三桂不成からの詰めろとなり、
後手からの△4五桂も消えるので、以降はややジリ貧気味になります。
よって、アマチュアの実戦に限って言えば、
ここでは、詰まされないことを祈って△4五桂と打つ手も有力です。
但し、△4五桂は詰めろとしてかなり厳しいので、
先手が開き直って全力で詰ましにくる可能性が高い点は不満です。
勝負手を放つ場合に限っては、緩い詰めろの方が、
相手の思考も緩みやすいので逆に良い、ということもあります。
125手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲同飛、▲3八玉
125手目で▲3八玉と寄っても凌いではいるのですが、
△3七歩~△2五桂のように包囲網を狭められると
後手玉が詰めろになっていないだけに少し怖いです。
本譜は▲同飛と取りました。
飛車を渡すのは怖いようですが、銀を入手できますし、
△同金となった形から、気になる王手は△4九飛くらいなので読みやすいです。
135手にて、後手の豊島名人が投了し、
広瀬竜王の1勝、豊島名人の3勝となりました。
投了図以降、後手玉の詰み筋は多く、手数も長いのですが、
△4二歩 ▲同歩成 △同角に▲3三歩と叩いてから、
豊富な持ち駒を盤上に1枚ずつ配置するように打っていけば、
徐々に後手玉の可動域が狭まって詰みとなります。
本局では広瀬竜王の歩を使った攻めの繋ぎ方が非常に勉強になりました。
竜王戦第3局
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