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金矢倉の基本形
下図が金矢倉(きんやぐら)の基本形です。
最小構成として、金銀3枚の配置が同じであれば金矢倉と言えます。
玉が入城するためには、角を初期位置から移動する必要がありますが、
角の移動先は三段目の金の下(二段目の金の右)になることも多いです。
尚、「金矢倉」は「矢倉」に分類される囲いのうちの1つですが、
他の「矢倉」よりも指されることが圧倒的に多いため、
単に「矢倉」と表現した場合に「金矢倉」を意味していることもよくあります。
金矢倉の特長
金矢倉は原則として居飛車の囲いです。
(戦いの途中で中飛車に変化するようなことはあります。)
金矢倉は金銀2枚を三段目に押し上げて配置しており、
上部からの攻めに対する耐久力が高い囲いとなっているため、
特に、相居飛車の戦型において、
相手の攻撃陣と自分の玉が向かい合っている状態で真価を発揮します。
また、囲いに参加していない駒(飛車・角・右銀・右桂・右香)の
利きが
囲いの反対側に集まっており、攻めの連携も良いため、
すべての駒が働きやすく、攻守にバランスの良い陣形を築くことができます。
尚、
対抗形(居飛車 vs 振り飛車)の居飛車側が金矢倉に組むことは稀です。
対抗形の場合は、相居飛車よりも横から攻撃される可能性が高いのですが、
金矢倉は横からの攻撃に対してあまり強くないためです。
金矢倉の評価
標準手数 | 14 手 |
横の耐久力 | 70 /100 |
斜めの耐久力 | 80 /100 |
上部の耐久力 | 85 /100 |
端の耐久力 | 70 /100 |
玉の広さ | 80 /100 |
玉の遠さ | 80 /100 |
囲いやすさ | 80 /100 |
陣形バランス | 80 /100 |
囲いの進展性 | 70 /100 |
※弊サイト独自の評価です。戦型や局面によって変動しますし、点数の合計が大きいからと言って必ずしも優れているということではありません。あくまでも目安としてお考えください。
金矢倉の前段階
組み方は様々なので、名前の付いている囲いを経由しないことが多いです。
金矢倉からの進展
金矢倉のまま戦いになることも多いですが、
駒組みが長引くと、主に銀の移動によって、別の名前の囲いになることがあります。
主な相手の囲い
矢倉か雁木がほとんどです。
金矢倉の主な弱点
大駒を打ち込まれる隙が多い
金矢倉は
金駒が上ずった陣形であるため、
相手に駒を
打ち込まれる隙が多くなります。
例えば、下図のように角をいきなり打ち込む手が成立する場合があります。
この角を無理やり追いかければ、金駒との交換に持ち込むことはできるのですが、
手数がかかるうえに、陣形を崩さなければならないというマイナス面も大きいです。
自陣の隙を意識して、
大駒を打ち込まれた際の厳しさを確認しつつ、
大駒交換後にはしっかりと攻め合いに持ち込むことができるように、
あらかじめ準備しておくことが重要です。
棒銀が端から進んでくる
金矢倉は
端を
金駒で守っていません。
下図のような状態だと、相手の棒銀で端から攻められてしまいます。
上図から相手が端歩を
突いて▲同歩 △同銀となります(下図)。
ここは
銀で取るのが攻め駒を前進させ続けるためのポイントです。
以下、▲同香 △同香で銀香交換となり、部分的には少し
駒得ですが、
相手が取った香を端に打ったり、飛車を端に寄ったりすれば、
相手の戦力が端に集中してしまい、突破が受けづらくなります。
端歩を突く手は玉が広くなるのでプラスになることは多いですが、
(特に矢倉で)相手が棒銀で攻めてくる可能性がある場合には、
端歩を突かないで様子を見たほうが良いです。
その場合、相手に端歩を突き越されてしまっても構いません。
歩だけで端を崩される
相手の持ち駒に歩が2枚以上ある場合(下図)でも、
金矢倉の端は狙われる恐れがあります。
上図から相手が端歩を
突き捨てて、
歩を垂らす(下図)だけでも、
囲いのバランスを崩さずに対応することが難しくなっています。
歩だけであれば、棒銀ほどの脅威ではありませんが、
他の攻めと絡めることで、より効果的になることもあります。
早い段階で相手に歩を与えすぎないように意識したうえで、
相手の持ち駒の歩が増えるまでには、攻めの態勢を整えておくことが重要です。
それでも上から攻めてくる
金矢倉は上部からの攻めに対して強いことは間違いないのですが、
飛車の攻撃力も高いため、相手が持ち駒を使って強引に攻めてくる場合があります。
例えば、下図のように、玉頭の歩の上に桂を
ただ捨てして、
▲同歩 △同歩となると、玉の目前まで歩が進んできて、かなり厄介です。
特に、相手の持ち駒が増えた中終盤では、
このような駒の
打ち込みが、棒銀と同様の破壊力を持つ場合があります。
端歩の関係もありますが、場合によっては、下図のように、
端へ
桂を控えて打ち、次に飛車先の歩を突くような攻め方もあります。
相手の持ち駒が増えると、これらの攻め筋を防ぎきることは難しいのですが、
相手が駒を捨てるということは、自分の持ち駒が増えるということです。
「自分が桂を入手したら相手玉に
詰めろがかかる」というような状況にしておけば、
相手の動きを効果的にけん制することができます。
詰めろのような段階までいかなくても、攻め合いの形を作っておくことは重要です。
玉の隣の金を狙われる
金矢倉は玉の右隣にいる金を、玉1枚でしか支えていません。
下図のように、複数の駒で玉の右隣の金を攻められてしまうと、
玉だけでは支えきれなくなって
受けに回らなければならなくなるうえ、
手順に
金駒を
剥がされて、囲いが弱体化してしまいます。
相手が十分な持ち駒を持っていると受け切りは困難なので、
この時点で相手玉に迫ることができていなければ負けが濃厚です。
上図のように危ない形は事前に予測したうえで、
実現させないように受けておくか、寄せ合いを目指すかを判断することが重要です。
飛車打ちを見せた銀捨て
金矢倉は一段目と二段目に金が1枚しかいないため、
相手の持ち駒に飛車と銀(角)がある場合には、
飛車打ちによる
両取りがかかりやすくなります。
例えば、下図のように、銀の
ただ捨てで
王手をされてしまうと、
▲同玉でも▲同金でも、王手馬取りに飛車を打たれてしまいます。
(玉が逃げたら馬金両取りに飛車を打たれてしまいます。)
尚、場合によっては、銀の代わりに角を打つ手が成立することもあります。
相手の持ち駒に飛車と銀(角)がある場合、攻撃陣の駒の配置に注意が必要です。